水なし印刷のパイオニアとして業界に名を連ねる創業74年の株式会社文星閣は、仕事の約7割を同業から受ける印刷のBPO※企業。主力の生産拠点には、表裏12色の両面印刷機(H-UV付リスロンGX40RP)をはじめ、計8台(UV機3台、水なし油性機5台)の印刷機を設備し、24時間355日の工場稼働で圧倒的な納期対応を誇る。2021年に「KP-コネクト プロ」によるデジタル化に着手し、1年がかりで多くの業務改革を実現した。その改革の内容と結果について、CSO最高戦略責任者 取締役の奥武士氏、工場長の瀬高次郎氏、生産管理部 部長の池田正吉氏にお聞きした。※BPO=ビジネスプロセスアウトソーシング
KP-コネクト プロで見える化と生産管理の再構築を実現
㈱文星閣は、2019年に生産拠点を新工場(昭和島工場)に移転し、最新の機械設備により生産力を大幅に伸ばしたが、2020年はコロナ禍により、多くの企業と同様、売り上げや利益率が減少傾向にあった。この状況の打開のため改革の陣頭指揮を任されたのが、奥取締役だ。「実は、利益率の減少はコロナ禍以前から始まっていました。利益が出る仕事、自社の得意な仕事は何なのかという分析が全くできていなかった」と当時を振り返る。そこで自らがリーダーとなりDX推進室を立ち上げ、改革に乗り出した。まず最初に取り掛かったのが、KP-コネクト プロの導入による「生産実績の見える化」だ。
「案件ごとにかかった時間、個々のオペレーターの生産性や機械別のOEE(設備総合効率)などを、勘や感覚ではなく数字で分かるようにし、それを根拠に対策をとれるようにすることが重要でした。このような見える化は、会社の空気を大きく変える効果もありました」
さらに「利益率を向上させる業務改革には生産管理が一番重要」という奥取締役は、KP-コネクト プロ導入と同時に生産管理の再構築プロジェクトを開始させた。
アナログの生産管理における多くの問題点
導入前の生産管理体制について、奥取締役は「生産管理の仕事は機械の振り分けだけだった。仕事の順番はオペレーターが自分で判断していたため、効率の良い時間の使い方ができていなかった」 と語る。瀬高工場長は「これまでは全てアナログなやり方でした。予定表を紙に出力し、そこに手書きで情報を追加していました。各部門長による1日2回のミーティングの進捗確認結果に基づいて、生産管理の担当が予定表を更新して現場に配布。担当者は1日に何度も現場を回り、あるいは電話して細かく調整していました。このやり方だと膨大な手間がかかるだけでなく、情報のタイムラグがあり、全ての段取りに無駄や遅れが生じていました」と多くの問題点を語った。
また、版、インキ、用紙など資材が揃わずに生産が止まってしまうなどの事例もあり、配送の準備など後工程にも大きく影響が出ていたという。さらに、これまでのアナログの生産管理下では、予定の記載漏れや指示漏れ、作業完了や変更時の消し忘れなど、ヒューマンエラーも発生していた。
デジタルの生産管理に一新
組織・業務・個の意識が変化
KP-コネクト プロを中心に据えたことにより、『生産管理部門がジョブをMISから連携しKP-コネクト プロ上で全ての予定を作成する』 体制へと変革。 『紙に出力していた予定表の配布と進捗会議を廃止。版、インキ、用紙、下版、印刷各工程進捗のリアルタイム管理』 へと業務フローを一新させた。
その効果について池田部長は、「KP-コネクト プロによる管理に変えたことで、昼夜で1日計8時間かかっていた予定組の作業が、20分以内に完了と大幅に短縮できました。事前に定めたジョブの標準時間をベースに行うため、生産管理の経験が少ない若手でも予定が組めるし、効率の良い予定組のシミュレーションも簡単にできます。これによって生産性は格段に上がった。1日に20〜30回かけていた進捗確認の電話もなくなった」と述べる。
瀬高工場長は、工場長という立場からその効果を「紙からデジタルの予定表に変わり、各担当者が進捗やスケジュールをリアルタイムで確認できることで、次工程の準備に無駄がなくなり、結果として配送遅れが圧倒的に減りました。1週間先の予定と仕事量が明確になったことで、営業は仕事をとりやすく、工場も計画的なメンテナンスを組みやすくなりました。他にも稼働の詳細情報から生産の課題が明確になり、印刷事故も減少している。案件ごとの実績データはクライアントへの単価交渉にも利用し効果を上げるなど、導入効果は多岐にわたっています」と語った。
KP-コネクト プロは、工場内にある印刷機8台とつながっており、全ての稼働状況がいつでもどこにいても端末で確認できる
改革推進にトップオペレーターを起用
これらは、一朝一夕で実現したのではない。「適切なジョブの標準時間の設定」 がキーポイントとなった。「実現するためには、トップオペレーターの経験と知識が必要でした」と奥取締役。
そこで抜てきされたのが、当時トップオペレーターだった池田部長。「当社の仕事の特性上、プロセスカラー + ニスや特色が多く入っており、色替え、ブラン替えなどの要因をどのように標準時間に加えていくか悩みましたが、過去の実績データと私の体感と印刷経験をもとに、KOMORIと相談しながら固めていきました。大変でしたが、おかげで今では誰でも精度がよく、効率的な予定が組めるようになっています」と試行錯誤の結果を振り返った。「標準時間はオペレーターの新評価制度にも活用され、日々の稼働実績によるインセンティブはオペレーターの意識向上につながっています」と語ってくれた。
見据える先はデジタル化からDXへ
奥取締役は、1年を経た改革の効果を 「利益管理と戦略をもってビジネスする基盤が整った」と総括。「残業や休日出勤が減りました。がむしゃらに働いて稼ぐのではなく、各々が必要な動きをするという体制に変わったのが、数字のインパクトより大きいです。その結果として利益率も上がっています。次の段階は、データを生かして顧客視点マーケティングや原価管理の徹底などにつなげていくことです。KP-コネクト プロは印刷会社のDXに欠かせないシステムだと思います」
世界初のH-UV搭載表裏12色機リスロンGX40RP(GLX-1240RP)と文星閣の皆様。