"効果"にこだわったDM商品を次々と開発
早くからDMの可能性に目を付け、印刷ビジネスからDMビジネスへとシフトさせた㈱ガリバー。もともとはテレホンカードのUV印刷をしていたが、テレホンカードが減少したタイミングで、熱圧着DMを開始した。中島社長は当時を「ハガキの郵便料金が50円に値上がりし、見開きのDMハガキなら同じ送料で2倍の情報を送れると企画したところ、顧客に喜ばれました」 と振り返る。DMを主体にしたビジネスを本格化したのは、2005年ごろ。封筒やPP袋が不要で、熱圧着したカタログに宛名を印字してメール便で発送する 「カタメール」 を商品化したところ、ヒットした。
「『カタメール』 に対する顧客の反応を受けて、顧客は印刷料単体ではなく、宛名印字料や発送料まで全てひっくるめて1冊の単価を見ていることに気付きました」そこでDM一本に絞り、〝効果?に徹底的にこだわったDM商品を次々と開発 していった。現在、そのバリエーションは約35種類にも上る。
「特に大判で中に封入できるDM商品があるのは当社だけです。商品サンプルやパンフレットなどが3点封入できる『サンプル in メール』 や32ページまでの冊子が封入できる 『デカブックメール32』 がそれに当たります」
DMビジネスの支えとしてリスロンGX40RPに期待
これら大判DMの薄紙などを印刷する主力機として、H-UV搭載リスロンGX40RP(菊全判両面オフセット枚葉印刷機)を導入した。選定の理由の一つは、H-UVだと中島社長は語る。
「UVで速乾というのは、パウダーが無いということがすごく大きい。DMは、印刷後に加工が必ずあります。油性印刷後にPODで両面バリアブル印刷をするとなると、非常に大きなネックになってくるのがパウダーです。パウダーがあると機械がすぐに止まったり、滑ってしまったりします。当社のDMは複雑な折も入ってくるので、オフ輪で印刷し紙が波打ってしまっていると、切る時点で位置がズレる原因にもなります」
H-UV搭載リスロンGX40RPを入れてから、50万部クラスのDMをやるようになったが、導入前ではとても受けられなかったと中島社長。
「80店舗くらいの名前など差し替えの連続が伴う、複雑な案件でした。油性でやっていたらおそらく4日程度はかかってしまい、納期的に無理でしたが、1日半程度で終えることができました」
パウダーの後加工の障害に対して、生産本部部長と工場長を兼任する有田氏は 「以前は、5万通すのに3回くらい止まり、その都度掃除して再スタートし、時間をロスしていました」。また、印刷部の細田次長も 「搬送関係のローラーにパウダーが付着すると滑ってしまい、それで機械が止まってしまいます」と、パウダーに悩まされてきたようだ。それが、H-UV搭載リスロンGX40RPの導入で、一気に解決した。
さらに、同機の導入を決定付けたのは、品質検査装置の存在だと中島社長。
「DMが他の印刷物と決定的に違うのは、チラシやパンフレットがクライアントの手元に残るのに対して、DMは残りません。そのため、発送されたDMの1部でもピンホールがあった場合、全部がそうではないかと思われてしまいます。また、当社の顧客は質に厳しく、平台できれいな印刷を求めています。オペレーターがマンパワーでチェックするのには限界がありますが、H-UV搭載リスロンGX40RPなら、PDF照合装置やPQA-Sによる品質検査・色調制御・自動版見当の高い機能によって、顧客の期待に応えることができます」
ガリバーでは、印刷を含めDM完成までの各工程でカメラや重量センサー、厚みセンサーなどを通して、商品の全数を検査し、エラー履歴のログを追うことができるため、問題が発生したとき、状況を素早く確認できる。これらの品質への姿勢が信用につながっている。
UVエンボスニス加工などの高付加価値DMも展開
同機を活用し、今後もDMビジネスに注力すると語る中島社長。その背景には、印刷業界の苦境の原因が販売品目の減少にあるという考えがある。
「印刷は、写植、フィルムなど販売品目として計上できるものが減っています。 これが、印刷業界が苦境に立たされている原因の一つだと考えています。一方、 DMは宛名印字が必要であり、区分けして発送も必要。必要だからこそ顧客はそ こにお金を払ってくれます。一つのDMに、返信用のハガキを付ける。そこにも宛名印字し、さらにハサミ不要で切り離せるようにミシンを追加するなど、レスポンス率を上げる工夫があれば、販売品目を追加しても納得いただけます。当社のDMは、宛名印字、区分け、印刷、加工、発送などが販売品目になり、不着に対してのデータクリーニングのサービスなど、データ管理も品目として計上しています」
今後、H-UV搭載リスロンGX40RPをどのように活用していくのか。
「UVエンボスなどの付加価値を付けたDMにも積極的に取り組んでいきます。また当社は今、DMの効果検証もビジネスにしようとしています。例えば、個人データとひも付けた二次元バーコードを印字し、お客様がアクセスすると、クーポン券を取りにいったことなどが分かるようにして、その情報を顧客にフィードバックする仕組みです。実際に5月に商品化しました」
中島社長は、印刷をコアにして、時代の先頭を行く、印刷会社の枠に納まらな い、ダイレクトマーケティングを支援する専門会社を目指している。