先駆けてUV対応することで取引先を拡大
情報印刷㈱は、2012年にUV機を導入した。その背景を山下社長は「印刷市場が小さくなっていく状況に、大きな危機感がありました。市場動向を見ると、出版印刷が減少していく中、パッケージや厚紙印刷は徐々に伸びていっており、その分野にシフトできないかと可能性を探っていました。もともと当社の仕事は、同業他社のものが8割で、小ロットから中ロットまでとなっており、取引先の規模は大小さまざま。
それら取引先の全てに対し、UVという特殊な技術を提供することで、各社が高額な投資をしなくても、新しい仕事を受けていただき、当社は製造面で最大限に協力する。こうした取り組みから、徐々に取引先が増え、大ロットの仕事も増加しています」 と語る。
今では、品質やスピードの面で、仕事はもうUVでないと無理だと感じているという。
日本プロセス秀英堂との協業工場にH-UV搭載リスロンG40
市場におけるUV需要の伸びを感じた山下社長は、今年2月、同じく神奈川県にある、日本プロセス秀英堂㈱の敷地の一角に設置していた第3工場をバージョンアップ。協業体制の強化を行い、高付加価値印刷に取り組む情報印刷と、高品質に強みを持つ日本プロセス秀英堂の協業による印刷工場 「タイアップ・ファクトリー」 を開設。工場の主力機として、H-UV搭載リスロンG40(菊全判5色オフセット枚葉印刷機)を導入した。
「それまでのUV7色機は、稼働の大半が通常の4色の仕事でした。しかし、一昨年あたりから、プラスチック原反や疑似エンボスなどの特殊な仕事が増加。通常の4色の仕事をするキャパシティーがなくなっていき、外注するようになっていました。その業況を改善するために、タイアップ・ファクトリーには、H-UV搭載リスロンG40の導入を決めました」
効果はすぐに表れ、導入前、全体の外注比率が大幅に増加していたのが、「外注1社分が、まるまる内製化できた印象」 と、長年同社の舵取りを担ってきた山下会長は語る。
ノートラブルで24時間稼働を安定実現
効果の大きさを、山下社長は 「油性機とリスロンG40を比べると、後者の生産性は2倍、3倍以上というのが実感。同じオペレーターを1人付けるのなら、圧倒的にリスロンG40に付けた方がいいというのが、経営者として素直な感想です」 と話す。
山下会長も、その生産性に目をむく。
「導入時、オペレーターはKOMORIのKGCプリンティングカレッジで教育してもらいましたが、相当みっちり教えられたみたいです。帰ってきた時は『かなりの量の受講内容だったので、頭の中を整理する必要がある』 との感想でしたが、今は 『全然問題ない』 と自信をもって操作しています。オペレーターを交代制にして、H-UV搭載リスロンG40を24時間稼働させたところ、毎日、ほぼノートラブルで稼働し、生産効率が非常に高い。色調や濃度管理の自動化によって不良紙の特定ができるため、後工程で抜くことができるなど作業の手順が確立でき、1人で紙積みや抜き取りチェックを行うなど、オペレーターのがんばりと相まって、計画していた以上の生産性になっています」
今回、なぜKOMORIのH-UV搭載リスロンG40を選択したのか。そこには山下社長の明確な考えがあった。
「導入機の選択肢として、ダクト等の必要な通常のUV乾燥はありませんでした。紙は厚いものから薄いものまで刷ることになるし、色の濃いものも刷る可能性がありました。さらに、プラスチック原反への印刷も考えられます。そうすると、単純に広い波長が必要となり、LEDよりも波長の広いH-UVで評価の高い、KOMORI機を選びました」
「総合工場」としてワンストップ生産をスタート
現在、タイアップ・ファクトリーには、H-UV搭載リスロンG40に加え、従来の印刷機、折り機、中綴じ製本機、断裁機も設置され、ラインを形成している。今後の展望について、山下社長は「総合工場」 というフレーズを挙げた。
「色に関して超一流の日本プロセス秀英堂は、四六全機を2台、それに中綴じ機を持っています。当社は、菊全のUV5色、モノクロの全判2色を持っていて、今回は無線綴じラインも増設しました。両者が組むことによって、ほぼ全ての印刷工程を、同じ場所で行えるようになりました。どのような仕事でも受けられる 『総合工場』 といえるでしょう。今後は、総合力を生かし、本当のワンストップを本格的にスタートさせていく計画です。設備面の製造力については、もう心配するところはありません。後は、どれだけ効率的に運用していくか。そのためにも、さらにKP-コネクトの活用を本格化していきます」
H-UV搭載リスロンG40の操作性について、渡辺機長は「修行を重ねるのではなく、勉強して練習すれば、パソコン操作感覚で使えるようになると思います。短期間での習得も可能で今の時勢にも合っています」と評価。