トラブルによるストレスからの解放でH-UV機導入
「人と技術の調和」を企業理念に掲げる公和印刷㈱は、「印刷は時代を伝える、色彩を伝える、言葉を伝える、季節を伝えるメディアそのもの」と考え、柔軟な発想と確かな技術を活かしたサービスの提供でお客様の信頼を得ている。
同社は、リスロンA37(A全判4色機)の1号機を導入。その経緯を今井社長に伺った。
「実は、都心の狭い工場に対応できるコンパクトな菊全機を作ってほしいとKOMORIさんに言い続けてきました。そして数年を経て完成したのが、菊全の紙にも対応できるA全機のリスロンA37です。多くの要望を取り入れて新開発された新機種に、評価の高い乾燥システムH-UVを搭載して導入しました」と当時を振り返り、導入理由について語られた。
「ニーズである短納期・高品質への対応はもちろんですが、一番の本音は長年悩まされてきた裏付きや汚れ、乾燥不良による後工程のトラブル、そして刷り直しなどのストレスから解放されたいという、当社の都合でH-UV機に切り替えました。」
同社では菊全対応機が2台稼働しているが、今井社長に稼働状況についてお聞きした。
「油性と比べるとあまりにもH-UV機の効率がいい。棒積みできるし、すぐにひっくり返して裏面が刷れます。後工程を考えると、H-UVでやった方が安心ですし、当然H-UVから仕事を入れていきます。品質的には油性とH-UVの見分けはつきませんので、特に刷り分けはしていません。しかし、H-UVと油性の印刷を混在させられないので、大量ものやページ数の多い印刷もH-UVだけでやるという形になってしまいます。毎月機械毎に売上を集計していますが、油性機の稼働率が悪いのが今の悩みになっています。H-UV機はお世辞抜きで予想以上の効果が出ています」と、導入していなかったら大変なことになっていたと感想を語られた。
パウダーを使用しない安全な印刷として小学校低学年向けの問題集など新たな仕事にも結びついているという。
インキ使用量の20%削減でコスト削減に貢献
H-UVのインキコストが下がることを願っていた同社は、昨年5月、KOMORIからの提案により新開発のH-UVインキKG-911の印刷テストを行っている。
「まず、マイレージ(印刷可能枚数)のテストを行いました。値段は従来のインキと同等だけど使用量が削減できるので、インキコストがトータルで削減できるということでしたが、ほぼその通りのテスト結果になりました。テストでは70%の平網で同じ濃度で1,000枚刷った時のインキ量を測定しましたが、色ごとにバラツキはあるもののインキ使用量は平均すると20%削減できるという数字がはっきりと出ました。発色についても現場から問題が起きそうな報告もありませんでした。これならいけると思い、最終的には工場長やスタッフの判断を得て採用することにしました。」
同社は、7月からKG-911の本格的な使用を開始し、基本的なプロセスはすべてKG-911に切り替えている。なお、同社はH-UV機導入時より、H液、ローラー、洗浄布などもK-Supply商品を使用している。
今井社長にKOMORIブランドの資材について伺った。
「H-UVがらみの資材はすべてKOMORI推奨のものを使用しています。KOMORIブランドについては、トラブルがあった時にメーカー間で責任をたらい回しされても困るので、KOMORIで一元管理されている資材を使うというのは良いことだと思っています」と語り、さらに「性能が良くて安いものを作ってほしい」と願いを込めて語られた。
流動性が良く、負担だった作業も大幅に軽減
「テストを行う前は半信半疑でしたが、今は要望を加味したインキになっているので安心して仕事ができます」と言う沼野部長に、KG-911の導入理由と成果について伺った。
「UVの経験がありませんでしたから、KOMORIを徹底的に利用して技術力を上げていこうという方針で進めています。ですから、マイレージ以外の優位性はロングでKG-911を使ってみないと分からないので、実際の業務の中で使ってみたいと思い、1回のテストだけで採用を決めました。
KG-911に切り替えて非常に作業効率が向上しました。以前のインキは流動性が悪いため、インキつぼをヘラで撹拌したり、調量ローラーの洗浄を頻繁に行っていましたが、それらの作業が大幅に軽減できたのが大きいですね。インキつぼの開き量の設定数字が明らかに違っていて、使用量が削減できているのを日々実感しています。色についてはカラープロファイルが簡単に作成できるK-ColorSimulator(KCS)を導入しているので、問題はありません。標準は印刷機なのでKG-911の印刷物を測定して、それにインクジェットやImpremia C80を合わせています。そして、何よりもKOMORIの営業や資材担当者が情報を共有し、問題があればすぐに対応してくれるので非常に助かっています」と語る。
田代係長にKG-911の使い勝手について伺った。
「H-UV機2台はそれぞれ1人ずつで稼働しています。KG-911はそれなりに濃度があるので、基本の濃度でよく刷れます。濃度変更の反応も良く、ドットゲインが悪くならないので使いやすい。絵柄の濃い仕事だと明らかに使用量が違いますね。それに、このインキになってからは流動性が良くなって、作業性も良くなりました。インキミストも以前のインキよりも飛散量が非常に少なく、半年くらい拭いていませんが、少し色づいている程度です」と語る。
全部H-UV機にしてフル稼働できる受注体制へ
今井社長に今後の同社のあり方について伺った。
「業界環境はますます厳しくなっているので印刷市場は縮小し、印刷会社も減っていくと思っています。ですから、受け皿として生き残れるように、何とか余力が残っているうちに生産設備は計画的にリニューアルしていきたい。もう油性機を持っている必要性がないので、早いタイミングでH-UV機にして瞬発力を高めていきます。また、今後はフル稼働させる物量を確保するために、同業他社からの仲間仕事、他社がやりたくない難しい絵柄ややっかいな刷りの仕事を今まで以上に積極的に受ける営業活動も展開していきます」と語る今井社長は、H-UV機に期待を込めて印刷の将来を見つめ続けている。