今後の時代に適応するこれまでと "別物"の印刷機
「 『機械は稼働しなければ"重し"になる』 という先代の考えもあり、当社はモノクロ印刷しかできない印刷会社でした」 そう答える協永堂印刷㈱の萩原社長。
先代の時代では、他社が請けたがらないモノクロ仕事を請けて業績を伸ばしてきた。そのため、オフセット印刷機は、菊半、単色、2色しかなく、カラー仕事は全て外注してきた。
「今後、カラー仕事にも対応し、内製化することを考え、A全4色機の印刷機の導入を検討するために、KOMORIの内覧会に参加しました。そこで出合ったのが、インプレミアIS29(29インチ枚葉UVインクジェットデジタルプリンティングシステム)でした」 萩原社長は、インプレミアIS29を見て、これまでのデジタル印刷機とは、エンジン、機構、品質、全ての面で別物という印象を受け、驚いたという。
「UV速乾ですぐに後の工程に移ることができ、しかもオフセット品質の印刷が可能です。オフセットと比べると印刷速度は劣るものの、デジタルが苦手としている、皮革のようなテクスチャーを施したレザックなどの紙にも、高い品質で刷れるという特徴にも関心を持ちました。さらに技術者の養成が比較的容易であり、当社にとても適した印刷機だと感じ、インプレミアIS29の導入を決めました」
多様化するお客様のニーズに対応する仕事に関しては、 「もともと当社が保有していた液体トナー式のデジタル印刷機では、菊四裁を超えるサイズが印刷できませんでした。インプレミアIS29を使えば、外注に頼ることなく、菊四裁を超えるサイズのポスターやパッケージを刷ることができます。導入の結果、品質、ニーズの両面で、クライアントに安定的に高品質な印刷を提供できるようになりました」
インプレミアIS29は表裏見当の精度と色域の広さが魅力
さらにインプレミアIS29は、萩原社長が機械選びのポイントとして考えていた、「兼ねる」 という要素を満たす機械だったという。「インプレミアIS29は、オフセット印刷以上の広色域を持ち、色校を兼ねることができます。 当社は、洋服ブランドとの取引があり、高いレベルの色校が求められています。色校の主流は、本機校正、つまり、実際の印刷機で色校するケースが多いと思いますが、それは安価ではありません。このケースにインプレミアIS29を活用すれば、一発で色を出すことができます。スピード感や手軽さに加え、本機校正を行った場合のプロセスと比較すると、よりコストを抑えた提案をお客様にできます」
加えて、萩原社長の心中には 「営業スタッフに不自由をかけさせたくない」 という思いもあった。「端的に言うと、以前のワークフローは、営業が仕事を取りに行き、外注先に行って色校を見て、今度はその色校をお客様の所に持って行って、商談し、成立したら本機校正を別の印刷所に出しに行き......と、営業に非常に多くのプロセスを課すことになっていました。そのワークフローを、大幅に短縮することができます。そのため今では、5千部、1万部のロットでもインプレミアIS29で印刷しています。また、インプレミアIS29は、小ロット多品種分野では絶対的なパフォーマンスを発揮できます。この明確な売りがあれば営業展開も図りやすいと考えています」 と、営業の効率化にも寄与することを挙げる萩原社長。実際、フローの短縮を実現できていることに加え、裏移りや印刷汚れの問題がなくなり、刷り直しのリスクを恐れず、安心して営業できるようになったという。
お客様の期待が高まった後にビジネスチャンスがある
本稼働から半年、現場は今回の導入をどう捉えているのか。事業本部生産課の土田課長代理は、「インプレミアIS29の稼働準備は、既存機との違いを把握することから始めました」 と、導入直後のようすを振り返りつつ、次のように評価する。「広色域で、RGBをそのまま使えること自体が、これまでと全然違っています。鮮やかで、写真などは奥行き感のある表現が可能で、お客様にもその魅力を感じていただけていると思います。表裏見当も非常に良く、準備時間が短いのも、大きなメリットです。これまで外注していた、レザックやヴァンヌーボなどの紙も、きれいに刷ることができ、お客様にも好評で、喜んでいただいています」
現在、コートやマットコート、上質紙で、DICとPANTONEの、さまざまな色を表現したオリジナルのカラーガイドをインプレミアIS29で制作。営業担当者がそれを持ち、お客様に提案に行っている。インプレミアIS29なら、特色を作らず表現できる。そのメリットを生かした戦略だ。
萩原社長は、 「マルチプレーヤー」 と表現するインプレミアIS29越しに未来を見つめる。「サイズ、紙質ともに対応幅が広く、オリジナルのパッケージも刷れます。例えば、お客様が、作ったものがぴったりと納まる箱を作りたいとなったときに、インプレミアIS29は多くの選択肢を提供することができます。その仕事で利益を上げるのではなく、お客様に当社の技術力・対応力を期待してもらう。そのことが、新たなビジネスにつながると考えています。当社の"未来をつくる仕事"をするのがインプレミアIS29なのです」
「小ロット多品種で、質の高いものを作ったら、お客様に100%感謝されます。その小ロット多品種の印刷も、通常のロットの印刷も兼ねることができるのが、インプレミアI S29。考え方次第で、さまざまなことに応用できます。お客様の課題を解決できる営業を育てていきたいです」と、萩原社長はインプレミアI S29の活用の場の広がりに期待する。