印刷からアセンブリまで一つの工場内で手掛ける
㈱メディアグラフィックスは、化粧品メーカーの一事業部門として出発した背景を持ち、顧客の約7割が化粧品業界だという。安藤工場長は、「『美』 の分野は特に感覚を伴う質の高い印刷が求められます。当社は、長年の実績による蓄積されたノウハウがあり、化粧品会社をはじめとした美容系や健康食品系、美術関係の印刷物を多く受注しています」 と、自信をのぞかせる。
同社は、2017年H-UV搭載リスロンG40(菊全判オフセット枚葉印刷機)導入、2018年クリーンルーム設置、2019年9月アプリシアDC105(菊全判寸延自動平盤打抜機)導入と、継続的な設備投資を実施している。その背景には、厳しい現状と強みを徹底的に生かす攻めの戦略があった。
「従来は印刷品質が高いという一点で安定的に受注できました。しかし、今は印刷物の需要自体がシュリンクしている状況。そこで、化粧品業界の仕事に精通している当社の強みをさらに生かすため、印刷工程の前後の仕事をもっと広げていくことにしました」 と後藤マネージャー。H-UV搭載リスロンG40の導入により、色や絵柄の高い再現性の向上と、表裏反転してすぐに印刷・加工に移れるスピードと生産性を手に入れた。さらに、アセンブリ生産のために設置したクリーンルームは、化粧品と医薬部外品の製造許可を取得。印刷とアセンブリ、二つの領域を一つの工場で手掛けていくというのがこれらの戦略の骨子になっている。そしてワンストップを実現させるピースとして、アプリシアDC105の導入だと、安藤工場長は語る。
「印刷からアセンブリの工程間で、抜きの部分だけを外注していた。外に出している部分を内製化することができれば、横持ちがなくなることで、さらなる品質の向上と納期短縮につながり、外注費の削減にもなります」
アプリシアDC105で前後工程が組みやすくなった
アプリシアDC105導入時には、KOMORIのトレーニングを3日間受け、4日目には本番稼働させた。現在は、化粧品のサンプル台紙にサンプルを挟み込むための切り込みと、折りやすくするための筋入れをメインに活用している。渡邉部長によると、今後は 「全抜きの仕事もあります。それには、紙のクセを考慮したり、面によっては切り込みが甘くなってしまったり、さまざまな調整が重要になります。今はテストを重ね、経験を蓄積している最中。早い時期に、抜きにも挑戦していきます」と、営業活動の拡大を示唆する。
また、アプリシアDC105は、すでに多くの導入効果が出ていると、安藤工場長は話す。「先述した通り、納期短縮、横持ち費用削減、外注費削減の効果は、導入前から期待していましたが、抜きを内製化することによって、得られた1〜2日の時間的な余裕により、前後の工程が組みやすくなったのは、うれしい想定外でした。例えば、印刷を1日先送りできる、あるいは後工程を前倒しするなどの調整で、印刷でも後加工でも生産アップを見込むことができます。より柔軟に仕事を回せるようになりました」
さらに、渡邉部長は 「当社はパンフレットなどで黒い絵柄が多いのですが、背割れ対策のため、表紙だけ外注で筋を入れてもらっていました。それが社内でできようになりました。H-UV搭載リスロンG40で刷り、アプリシアDC105で表紙だけ筋加工を行い、その間に本文を折り、その後、中綴じに掛けるという流れが社内で完結できる。このメリットがすごく大きいです」 と続けた。
上流から下流まで一貫して顧客をサポートできるように
今後は、アセンブリにも、アプリシアDC105の導入効果を波及させていく計画だ。後藤マネージャーは 「例えば、顧客から 『限定キットを販売したい』 という話があった場合、これまでは販促の印刷物だけの仕事を視野に入れていました。しかし、アプリシアDC105を導入したことで、限定キットのパッケージデザイン・設計から入り、中に入れる商品の保管を含め、印刷、打ち抜き、形をつくり、アセンブリを行い、最終的にパッケージにして納品できるようになりました。上流から下流まで一貫して関わることができ、お客様にとっても大きなメリットを提供できると思っています」 と語る。
メディアグラフィックスの今後について、安藤工場長は、「次は、アプリシアDC105にひも付けた戦略として、インプレミアIS29(29インチ枚葉UVインクジェットデジタルプリンティングシステム)のような多角的なデジタル印刷機を入れることも考えています。そうすれば、本当の意味で、自社だけで最初から最後まで、多くの案件を完結できるようになります」 と意気込みを話された。
「アプリシアDC105の導入は、アセンブリにひも付けた内製化戦略の一環です。利益を確保していくために、新しいことにも取り組まなければなりません。"何か"を考えたとき、まっ先に取り掛かるべきなのが、内製化することだと思います」(安藤工場長)