二和印刷株式会社は、1946年の創業以来、凸版、凹版、オフセット、スクリーンの四大版式に取り組み、化粧品ラベル・パッケージに特化した技術を構築してきた。2021年10月には、品川と横浜にあった工場を一本化し、伊勢原に新工場を建設。多色印刷と環境対応印刷の両立が可能なコーター付きリスロンG40アドバンス(菊全判6色オフセット枚葉印刷機)を導入した。導入の背景と効果などについて、堀野朝広社長、伊勢原工場工場長 兼 品質保証部部長の薄井修氏、製造部部長の西森修三氏、製造1課オフセット係係長の工藤良太氏にお聞きした。
リスロンG40アドバンスの多角的パフォーマンスに期待
「100年企業を目指すため、一貫工場を建てたい」 という夢の実現に向け、二和印刷㈱に新規工場を建設するプロジェクトが立ち上がったのは、5年ほど前のことだった。完成した伊勢原工場は全ての工程に新台を導入、印刷機にはコーター付きリスロンG40アドバンスを選び、カラー印刷の需要増加や脱プラ対策など、今後の需要を大きく意識した構成とした。
堀野社長は、選定理由について 「トップ工程であるオフセット印刷の印刷品質が、二次加工が多い当社のものづくり品質を大きく左右します。そこで、準備時間短縮・見当精度・色再現性のどれをとっても最高峰のパフォーマンスを期待できる、リスロンG40アドバンスを導入しました。社会が脱プラへ向かう中で、当社はPET、PP、マットに代わる表面加工を模索し、スクリーン印刷で再現していました。オフセット印刷に置き換えることで生産性を向上させるために、新台の導入を決断し、これが功を奏しました。すでにお客様に、脱プラ対策としても採用いただいています」 と話す。また、プロジェクト発足時から関わった薄井工場長は 「今までは4色機があれば、大半の案件に対応できていましたが、プロセス4色にプラスして特色となると、6色機以上が望ましかった」 と、生産面でのニーズの変化を踏まえ、KOMORIとの綿密な打ち合わせを経て、6色機を選んだ背景を明かした。
既存の工場とは全く異なる入室基準を設けている伊勢原工場。「髪の毛などの混入が一切なくなり、品質面が飛躍的に安定しました」(堀野社長)
搭載された複数の機能で品質や生産性が向上
同社では、特色印刷とベタ印刷の案件が多く、従来機では見当精度と乾燥性を考慮し、印刷速度を抑えていた。
リスロンG40アドバンス導入後の効果について、堀野社長は 「見当精度が良く、ほぼ一発で合います。箔押しやエンボスなど二次加工が増えるほどズレが生じやすくなりますが、新台で刷った後は見当が合いやすく、多面付けでも二次加工にすんなりと入れます」。 また、印刷直後のインキの乾燥(硬化)に配慮し、延長デリバリー仕様を採用した。現在は、印刷速度を1. 5倍にしても見当精度は維持され、乾燥不良などもないという。さらに、「ヒッキーやゴーストなど、クレームにつながる印刷不良が本当に減りました。今回、検査装置(PDC-SX、PQA-S)を付けたことで、オペレーターに安心感も生まれました」 と評価する。
薄井工場長は 「オフセット印刷のみで完結する案件は、検査装置のおかげでブランクス検査工程を省くことが可能になり、全て検査なしで進めていますが、クレームは発生していません」 と、品質向上と省力化を同時に実現していると話した。
製造部を統括する西森部長は、新台について 「特色が多く、切り替え作業では、ローラー洗浄・ツボ替え・色替えなどを行っています。既設機は4色で1時間かかっていましたが、新台は6色コーター付きでほぼ同じ時間で終わります。フルAPC搭載により版交換も半分ぐらいの時間で済むので、準備時間が大幅に減っています。色調も、プレインキングによるインキ出しから刷り出しまでの回数が大幅に減り、損紙も以前に比べて約半分になっています。不良も少なく、面内ムラはほとんどありません」 と話し、「速度を上げても見当精度や色調のムラがなく、刷り出しから終了まで一定水準で印刷を行える、世界最高峰の機械だと実感しています」 と評価した。
給排紙精度については 「当社は、使用する紙の種類が豊富です。既設機では苦労していましたが、新台では、一般紙、蒸着紙、気泡紙、黒紙とPET、フィルムなど異なる用紙や、紙厚が0.1から0.5ぐらいの用紙でも、エア調整のみで印刷可能であることに驚いています。デリバリーについても本当に紙揃えが良く、すぐに次工程に回せるようになりました。オペレーターの負担も減っています」。また、工藤係長も 「従来機と比べてサッカーの第1吸と第2吸の数が多く、フィーダーは紙流れが抜群に安定していて、紙曲がりや二枚出しの問題がほとんどありません。エアのブロアー数も増え、紙出しがスムーズになりました」 と説明する。
女性社員も多く、調色を担当するなど、現場で活躍している。
新工場操業初期に顕在化した課題を KGCの活用で解決
新工場の稼働開始直後、移転による従業員の大幅な入れ替えにより、生産性が一時的に低下したが、KGC(小森グラフィックテクノロジーセンター)による約1年間の改善サポートが、生産性向上の契機になった。堀野社長は 「印刷知識に加えて、実効性のある5S活動や日々のメンテナンスの重要性を再認識したことで、オペレーターの意識が変わりました。印刷品質が向上し、生産性は移転当初より1.3倍ほど上がっています」 と話し、機長の工藤係長も 「メンテナンスとPQA-SやPDC-SXの使い方を教わることで、品質を維持できるようになり、自信にもつながっています」 と話す。
最後に、堀野社長は 「パッケージは消費者に夢や希望を与えるものだと思っています。技術をしっかりと継承していき、目で見て触ったとき、感動を与えるような印刷物を作れる職人を育てていきたい。世界の印刷技術は急速に進化・進歩しています。『五感で感じる紙の楽しさ』 を付加価値として、感動を与えられる印刷物を、世界に発信していかなければならないと感じています」 と、将来への展望と思いを語った。
現場の平均年齢は約27歳。薄井工場長は「新卒で入った社員が定着して頑張っています。数年先には会社を引っ張るような人材に育ってくれるでしょう」と成長を期待する。