多能工化を実現するインプレミアIS29
プリントネット㈱は、受注の多くが印刷専門分野の顧客からのもので、現在オフセット機が12台、PODが16台稼働しており、今回ここに、B2デジタル機のインプレミアIS29(29インチ枚葉インクジェットデジタルプリンティングシステム)が、新たに加わった。
小田原社長は、「3千部以上がUVの輪転機、千部以上を枚葉オフセット機、100部未満はPODと考えています。当社初のB2デジタル機となるインプレミアIS29は、枚葉オフセット機とPODの中間部数を刷る印刷機として期待しています」 と、使い分けの構想を説明する。さらにインプレミアIS29をラインアップに加えた理由を 「オフセット機は刷版を出して、両面8色分の版付けを行うと、準備時間が必要になるし、ヤレ紙も相応に出ます。それに対して、デジタル機は刷版不要で、ヤレ紙も抑えられます。デジタル機をラインに組み込むことで、オフセット機で生産できるキャパシティーを広げることができます。インプレミアIS29を選んだのは、オフセット製造技術を生かした反転機構によって、両面が一発で刷れるというのが一番の決め手です」
インプレミアIS29は、現在、どのように経営や工程にマッチしているのか。
「インプレミアIS29は、紙種、紙厚など大きく変わらなければ、異なるジョブを連続して投入することができ、準備、切り替え時間をさらに短縮できます」また、「人手の確保」 という面でも、インプレミアIS29は大きく貢献していると、小田原社長はいう。
「印刷機にしても、後加工機にしても、通常は1台マシンを増やすとき、人手も増やすことを考える必要がある。ところが、インプレミアIS29は短時間の訓練で、断裁機のオペレーターでも、パートさんでも操作することができ、多能工化が可能。人材を有効に活用できます」
生産性、汎用性、色域面全てにおいて期待通り
インプレミアIS29は、短納期や小ロットの印刷から加工、断裁、発送までを一貫して行っている、東京デジタルセンターに設置されている。同センターで、センター長補佐を務める茂木氏は、現在の稼働状況を次のように語る。
「面付けによって変わりますが、大きいサイズのものだと200部位まで、ポストカードや名刺などの小さいサイズのものは5千から1万までは、インプレミアIS29で刷っています」
使っていく中で、茂木氏は改めて特長を実感しているという。
「インプレミアIS29は、まず両面印刷ができることが大きい。そして、幅広い種類の用紙に対応しているのも魅力です。さらにUVインクジェット方式であり、厚紙や凹凸のある紙にも印刷でき、プレコートが不要なことも、仕事の幅を広げてくれていると感じています。実際に、0. 06ミリコート紙から0. 3ミリのケント紙まで刷っていて、その都度、細かく設定を変える必要もありません。プリセットを決めておけば人手をかける必要もなく、スムーズに刷っていけます。性能や使い勝手は期待通りでした」
広色域も、インプレミアIS29の特長だ。茂木氏はオフセットとのマッチングに対して 「オフセットでは、生産性の面でなかなか受けられなかった特色ものも、インプレミアIS29の色域内で再現できることがあります。この機械ならではの、広色域の印刷商品のアイデアも出てきています。また、KOMORIのCMSソフト 『K-カラーシミュレーター2』 を使用して色を合わせています。色ブレが本当に少なく、全体的な色の合わせ込みはうまくいっています」 と評価。さらにオフセットとの比較において 「単純な回転速度の面ではオフセットにはかなわないが、小ロットを何台も続けて実行する場合、高い見当精度や準備時間の短さが際立ち、オフセットの生産性を上回ることもあります」 と高く評価した。
また、インプレミアIS29は、多能工化でも効果を発揮し、現在、担当者4人のうち、2人が新人社員で1人が若手だが 「それで品質が落ちることはない」 と、スキルレスな面でも効果を生んでいると話す。
KOMORIの断裁システム、アプリシアCTX115を操作する小西氏。
オフセットの工場も効率的に稼働できるように
今回、インプレミアIS29の導入で、PODを含めたデジタル面での売り上げが向上しただけでなく、オフセット工場の効率化を促進するなど、全社的な生産向上にも効果が出ているという。
さらに同社では、生産性を高める目的で、K O M O R IのアプリシアCTX115(プログラム油圧クランプ大型断裁システム)を導入した。「インプレミアIS29で多面付けが増えていくと、次に断裁工程に負荷が出ます。JDFを運用して面付けのデータをアプリシアCTX115に取り込んで、自動的に指示を機械にさせることで、多能工化したオペレーターがミスなく断裁仕上げをできると考えました」 と茂木氏。
現在のインプレミアIS29の稼働時間は1日8時間弱。今後24時間のフル稼働を考えており、2台目の導入も検討している。小田原社長は、「いろいろなことを始めるというよりは、今ある業務内容の効率をいかにアップさせるか。そして当社の 『売り』 を作って、営業利益をいかに高めるかを、突き詰めていくことを考えています。それを実現できる機械が、インプレミアIS29です」 と、大きな期待を寄せている。
導入の結果、「限られた人数で、インプレミアIS29、アプリシアCTX115、梱包作業のローテーションが組め、多能工化が進んでいます」と、茂木センター長補佐。