四六全判機は今後、競争力の要になる
「技術による前進」 をキャッチフレーズに最新鋭の印刷機の設備を進める㈱三祥印刷。昨年末には、H-UV搭載リスロンGX44RPを世界で初めて導入した。その背景には、四六全判機が今後、競争力の要になるという、金澤社長の先見がある。
「弊社は、刷版焼きの会社から始まりました。PS版が登場したことで、印刷会社の内製化が進むと考え、印刷機を導入し、下請けを開始。付き合いのあった印刷会社から仕事を引き受けることでスタートした印刷業は、短納期でも品質の高い仕事をすることで信頼を集め、次第に大手印刷会社からも依頼されるようになりました」
変化をいち早くつかみ設備投資を進めていった同社。現在は、四六全判機から菊半裁機まで、片面機、両面機、油性機、H-UV機を取り揃え、薄紙・厚紙問わず、幅広く何でも受けられる体制を整備している。印刷機の中でも、金澤社長が熱いまなざしを向けているのが、四六全判機だ。
「菊全判機は世の中に台数が多いので、単価勝負に陥りやすい面があります。しかし、四六全判機はまだ台数が少なく、希少価値があるため単価勝負になりにくい。また、スペースの関係で導入したくても入れられない会社も多く、四六全判をやりたくてもなかなかやれない状況にあります。そのような中で四六全判ができるというのは、それがそのまま競争力につながると考えています」
総合印刷会社として、お客様の要望に応え業績を伸ばしてきた同社。四六全判機は、大型サイズの印刷に対応するだけでなく、多丁付けによる効率化も期待でき、品質と料金のバランスを、一層高めている。
H-UV搭載リスロンGX44RP世界初、1号機を導入
H-UV搭載リスロンGX44RPの導入は、ただの〝最新鋭機の導入〞ではなく、世界全体で1号機となった。
「弊社がH-UV機を最初に入れたのは、2012年です。リスロンS44でした。当時はまだH-UV機は広まっておらず、弊社のオペレーターもやったことがありませんでした。短納期化へのご要望が高まる中、何とかその声に応えたいという思いでした」
実際に、速乾・短納期対応は他社への差別化になり、業績アップへの足掛かりになった。長い歴史の中で、プリプレスからプレスまでの管理体制を確立していた。そんな中、油性からUVにすることへの抵抗はなかったのだろうか。
「導入見学会に参加し、品質には問題がないと感じました。実際に導入しても、乾きにくい紙をH-UVで初刷りし、上がりを油性で行ってもクレームなど全くなく問題ありませんでした。粉を使わないので、油性での後刷りも何の問題もありません。裏付きの心配もなく、品質と生産性の向上につながっています」
オペレーターへの不安もなかったようだ。デリバリーで紙が排紙されるタイミングや粉を吹く量、板取りの必要・不要、パレットの枚数などを、そのつど考えることなく進められるため、印刷機の回転数を上げることができると、機長も喜んでいるという。H-UV搭載リスロンGX44RPはすでに、1月12日から24時間体制で稼働を開始しており、6月にはリスロンGX44RPの内覧会を実施し、多くの取引先やお客様にお披露目した。また、7月には5台目のH-UV機として、四六全判機であるリスロンG44を導入した。
KP-コネクトでH-UV機をつないで生産力をアップ
リスロンG44を加え、現在、10台の印刷機の全てがKOMORI機だ。そのうちの9台が 「KP-コネクト」 でつながり、生産力を向上させている。
「工場が広く、なおかつ事務所は別の階にあります。現場の階に降りずにリアルタイムで進行度合いなどを把握でき、迅速に指示を出すことができるようになりました。例えば、入っている仕事の進行が予定より早く進んでいるのであれば、繁忙期であれ、さらに仕事を入れるよう営業に指示が出せます。また、作業が止まっているときも、何が原因で止まっているかがすぐに分かります」
さらに金澤社長は 「KP-コネクトでさまざまな印刷データが蓄積でき、何を改善すればよいかの分析が可能となりました。PDC-SXで取得した濃度数値の蓄積も、顧客への〝目で見える品質保証〞になっており、お客様からの信頼がさらに高まったと実感しています」などの例を挙げられた。
今後のビジョンについてお聞きした。
「3年ごとに区切り、経営の計画を立てています。今後は、四六全判機の台数をさらに増やしていくことを考えており、次は、東京オリンピック・パラリンピック前後を視野に入れています。これからは、四六全判の費用対効果を見ながら、どのように印刷機を生かしていくかを考えていきたいです」
金澤社長の目線は将来を見据えている。