株式会社スマートグラフィックスは、株式会社ウエマツのグループ会社として2016年に設立。戸田工場は2023年より印刷通販会社からの製造受託業に専念している。「KP-コネクト プロ」による見える化で、事務作業や各工程の作業効率を改善。さらには「EQUIOS/CTPトランスポーター」との連携により、印刷予定組みと刷版出力、印刷機のセットアップの自動化・省力化といったスマートファクトリー化を実現している。その取り組みの背景や今後の展望について、福田佳祐専務、執行役員製造本部長の金子純氏、WP部次長の市川幸太氏、社長室の松原萌氏、プリプレス部次長の吉川照幸氏にお聞きした。
工場全体の一元管理へ向けた着実な取り組み
「KP-コネクト プロとCTPトランスポーターの連携により、プリプレスの工程はほぼ人を介さず、ノータッチで動かせています」 。㈱スマートグラフィックスの福田専務はプリプレス工程の例を挙げ、戸田工場全体で推進する自動化への取り組みを話す。同工場では、2019年に導入したLED UV搭載リスロンG37Pを含む印刷機4台、断裁機4台、折り機5台、中綴じ機1台が稼働し、チラシ、折りパンフレット、中綴じ冊子を中心に生産している。
「現在、印刷機は全て最高回転数で稼働しており、準備時間は平均6~7分まで短縮できています。梱包工程にもパレタイジングのロボットを導入するなど、工場全体での生産性を高め、平均1. 5日の納期で、ノンストップで生産できる体制を目指して運用しています。1日のジョブ数は200から250ジョブ。印刷機1台当たり50ジョブ近くこなしており、OEE※は50%前後で推移しています」 と圧倒的な生産状況を語った。
「KP-コネクト プロの管理画面は、ユーザーインターフェースが優れています。『現在時刻』と『予定』と『実績』が直観的に分かります」と、事務所で進捗を確認する金子本部長。
KP-コネクト プロで工場内の生産管理と実績管理を高度化
KP-コネクト プロを導入した背景には、工場内の 「管理」 の課題があった。「印刷通販の製造受託専門のため、膨大な量のジョブをこなしていますが、既存のMIS活用では工場内の生産状況を十分に把握できませんでした。出荷時点は把握できますが、各工程の生産状況は見えず、データをもとにした実績管理や生産管理も難しい状態でした」 と福田専務。KP-コネクト プロが、印刷機だけでなく全工程の機器も含めて連携できる点に着目し、同ソフトウエアを中心にした管理体制を構築することを決定した。現在は、刷版、印刷、断裁、折り、梱包の各工程を一元管理している。「以前は手書きだった着完の記入が、いまは自動取得とiPadでのバーコード読み取りに変わりました。データをもとに各工程間でボトルネックを改善し、工場全体の生産性を上げる活動に取り組んでいます。今では出荷状況もシステムで一括管理でき、漏れ防止の作業も必要なくなりました」。結果、工場内のトレーサビリティーがとれるようになり、問題箇所の特定・対応が迅速になったという。
作業改善について松原氏は 「オペレーターの非生産時間をどう削るかが課題でした。KP-コネクト プロ導入時に、切り替え時間は8分、回転数は最高速度1万5000回転で作業標準時間を設定するようにしました。それを基準に改善活動を行っています。ジョブ単体では1~2分の短縮ですが、1日200件を超えるジョブの全体では大幅な短縮につながります」 と、データ分析による効果を挙げた。
「KP-コネクト プロに集まったデータをもとに、機長同士で意見交換して改善につなげるなど、現場でもデータを活用しています」(市川次長)
CTPトランスポーターとの連携で生産性向上と省力化・平準化を達成
短納期かつ大量の印刷通販の仕事を扱う同社では、常に変動する仕事の状況に応じて効率的に印刷機の予定組み・版出力を行うことが大きな課題となっていたが、KP-コネクト プロとCTPトランスポーターの連携で可能になった。福田専務は 「受注後、ジョブのデータは全てKP-コネクト プロに流れてきます。ボタン一つで、納期の早い順番、機械ごとの負荷の平準化、パレット切り替えが最小化する組み合わせを考慮し、スケジューリングできます。また、予定ズレの影響を最小限にするため、印刷の3時間前に版出力するようカスタマイズしています。その後、各印刷機に自動でジョブが設定されます」 と、自動化のフローを解説する。以前は、1日1600版をフィーダー人員3人で振り分け、3~4時間かかっていた。「自動化したことでフィーダーの人員を減らすことができました。また、印刷機のセットアップ作業では、印刷機にツボデータと紙情報も流れるため、機長のタッチ数が大幅に減り、生産に集中できる環境になっています。経験の浅い外国人の機長が、ベテラン機長とそん色なく生産しています」
吉川次長は、「プリプレス部で予定組みをする必要がなくなり、版出力もノータッチです。かなり負担が減りました。以前は、限られたメンバーで作業をしていましたが、今は誰でもできるようになりました」。市川次長は 「省力化として一番大きいのは、各機長が紙の予定表を見て頭でスケジューリングして予定を組む必要がなくなったこと。機長は、版が出てきた順番にジョブの切り替え作業を素早く終えることで、生産性を高めていけます」 と話した。
CTPトランスポーターが印刷機別に刷版を自動仕分けしてスタックしていく。
スマートファクトリー化を進め 生産性世界一を目指す
今後について、福田専務は 「ポストプレス工程ではいまだに多くの人手がかかっています。KP-コネクト プロを中心に機械をつないで改善していきたい」 と、さらにスマートファクトリー化を進める意向だ。「競争力を強化するには、最新鋭の機械を使い、さらには機械と機械の間を自動化して、1人当たりと工場全体の生産性を高めていくことが不可欠です。理想は、機械が生産し、人が稼働を管理する無人工場。生産性世界一を目指して取り組んでいきます」 と語った。
各メーカーとも連携しプロジェクトを進める、松原氏、福田専務、金子本部長。
※OEE=Overall Equipment Effectiveness(総合設備効率)