スマートファクトリーを実現する新工場をオープン
㈱スマートグラフィックスは、2016年7月、ウエマツグループに、マコト印刷株式会社をグループ化したことによってスタートした。
福田社長は 「最初に着手したのは、売り上げに対する生産設備の適正化です。マコト印刷には、板橋と川口の二つの工場に12台の印刷機があり、『過剰』でした。そこで6台に縮小し、最初の決算で黒字化を達成しました」 と話す。
次に計画したのは工場を1カ所に集約することで、ウエマツの戸田工場近くに新工場を建設した。
「板橋工場と川口工場を売却した資金を新工場の設備に投資し、2019年10月にオープンしました。新工場は当社が目指す 『スマートファクトリー』 を実現していく場です。そこで同年11月にマコト印刷の社名を、スマートグラフィックスに変更しました」
印刷機の選定テーマは「資材の節約」「時間の節約」
工場に設置した印刷機は4台。そのうち3台が新台となっている。
「従来から生産効率を追い求めてきたが、越えられない壁がありました。生産効率を詰めていくと、プルーフにいかに速く合わせ込めるかが、要となります。これまで、カラーマネジメントや測色機で常に面内濃度を均一に保ち、多くなってきたデジタル原稿に合わせていくことをテーマにやってきました。新ビジネスでは、原稿のない印刷をいかに効率よく刷り上げていくかに挑戦し、今では、常にジャパンカラーに準拠した指標で、安定した品質を実現しています。小ロット印刷において、色合わせに時間をかけず、品質が高く、いかに安定して、しかも多くの仕事を印刷するかがポイントになります。また、後工程の時間を短縮するために、LEDUVの採用も決めていました」
そこで、選んだのが、LED UV搭載リスロンG37P(A全判反転機構付オフセット枚葉印刷機)。初めてUVを採用して、社名変更と同時にスタートさせた 「新ビジネス」 を担う存在だ。
「選定テーマは、二つありました。一つは資材の節約、もう一つは時間の節約。資材の節約では、版サイズが大きいリスロンG37Pは、37インチの機械で菊全まで刷れるという非常に効率的な版サイズになっていて、ブランケットなどの諸資材も節約することができます。また、時間の節約では、『パラレルメイクレディ』 に着目。ブランケット洗浄、版交換、プレインキングの三つの作業が同時に行えるもので、準備時間の大幅な短縮を期待しました」
KP-コネクトによる見える化 実稼働率は単日最高49・4%
リスロンG37Pが稼働して半年が経過した。福田社長は 「従来の印刷機と比べて、4倍の生産性を実現できている」と評価する。
費用対効果(ROI)を最も重視して印刷機を検討した結果、リスロンG37Pの導入を決定したが、実際に併せて導入したKP-コネクトにおいて、その効果は明確な数値を示している。KP-コネクトの活用について、福田室長は次のように話す。
「KP-コネクトを導入し、基本的に着目しているのは 『実稼働率』 『立ち上げ時間』 『試刷り枚数』 の三つ。 当社は同業からの製造に特化しているため、基本的に単価のコントロールはできません。粗利を上げていくためには、立ち上げ時間や試刷りの枚数を減らしていくことが欠かせません。現状、立ち上げ時間は10分程度。良いときで6分台を記録しています。これは従来の時間と比べると、4分の1か5分の1。オペレーターの練度が高まれば、6分をコンスタントに出せるようになってくると思います。試刷りの枚数も時間とともに減っています」 。また、実稼働率については、驚異的な数値が出ていると続けた。「実稼働率は、単日の最高で49・4%。当然、ロットの長短で多少の増減はありますが、平均値で見ても、他の機械と比べてかなり高い数値になっています」
生産管理を担当する金子本部長は、「リスロンG37Pは、全て機械の方で全自動でやってくれる。担当者はメンテナンスをより良くやって、機械が最高回転で動くようにするだけとなっています。また、既存機と比較して見える化が進んでおり、進行状況ではKP-コネクトのデータを大いに活用しています」 と話す。
実稼働を表すKP-コネクトの画面
工場内の運搬の自動化と後工程を含む一体化を目指す
パラレルメイクレディについて清水本部長は、「あっという間に本刷りに入れます。新ビジネスを立ち上げるのに一番必要な準備時間短縮・安定性に優れています。刷り出して計測すると、ほぼ見当・色調が合っていて、現在、2回で本刷りに入れる状況です」 と評価する。
新工場の生産効率の追求は終わらない。福田社長は 「目指す稼働率は50%以上」 とし、 「さらにもう1台の増設を計画しています。また、その先に工場内の運搬を自動化し、断裁機と折り機を一つのシステムとしてコネクトすることで、スマートファクトリーの完成形を目指していきます」 と語った。
「リスロンG37Pは、『実稼働率』『立ち上げ時間』『試刷り枚数』などの数値が、目指す所に一番近く、従来の印刷グループ(原稿に合わせる印刷)の課題解決も見えてきます。機械の稼働状況の見える化ができることは素晴らしいことで、KP-コネクトの数値は、人事考課にも採用しています」(福田社長)