オンデマンドビジネスの経験と実績を重ねる
和多田印刷㈱は、顧客の要望に合わせた変化と、次の時代を見据えた取り組みの2軸から事業を変革してきた。
「創業当初からお付き合いのある企業が、現在の顧客のメインになっています。まずは顧客の新たな要望に応えられるように設備投資や技術のレベルアップを図っていき、その後に自分たちで付加価値を考えて、競争力を高めてきました」と和多田社長。玩具(ゲーム)分野やアミューズメント分野が多いことから、小型ICタグを埋め込んだカードやタグなどのIDメディアの製造にも乗り出している他、欧州の玩具規制や化学物質規制をクリアできる検査体制並びに仕組みを社内に確立し、顧客のグローバル展開を後押ししている。そんな同社が、2016年からの中期計画に盛り込んだのが、オンデマンドビジネスの拡大だ。
「オンデマンドビジネスの方針として、小ロット対応による受注拡大を掲げています。以前から、大判UVインクジェットを活用して特殊POPを作るサービスを展開しており、カッティングマシンを導入して商品を拡充していますが、顧客と案件を進める中で、冊子やチラシも一緒にやってほしいというご要望をいただきます。これまで小ロットの印刷は外注していましたが、中期計画を達成するためにも、小ロット対応で冊子などが刷れる機械を入れ、内製化を検討していました。オンデマンドビジネスを発展させるために、まずは経験と実績を重ねる目的で、インプレミアC72とKCS2を導入しました」
インプレミアC72は特に文字品質が高い
いわばオンデマンドビジネス拡大に向けた布石となる今回の導入について、執行役員・製造本部の西本部長は 「培ってきた製版技術・制作技術を生かせる」と直感したという。
「これまでも、経験を生かして新しいビジネスに挑戦してきました。オンデマンドについても、制作部門、製造部門に営業が加わり、導入に向けてさまざまなメーカーの機械を対象に、ジャパンカラーの再現性や広色域印刷の再現性、顧客の要望が厳しい文字品質などを検証しました。その中で、インプレミアC72は、文字品質が高くてジャパンカラーの再現性も良く、さらにKCS2によって、オフセットとカラーマッチングできることも決め手でした」
CMSとしては、ジャパンカラーに取り組んでおり、どの印刷機で刷っても同じ色を再現できる。KCS2を導入することで、KOMORIのオフセット印刷機2台の色をインプレミアC72でも再現できるように調整している。
「さらに、弊社にはジャパンカラーよりも厳しい 『色差3』 というオリジナルの基準(目標値)があります」 と西本部長は語り、「インプレミアC72とKCS2の組み合わせは、その厳しい基準においても色が合わせやすく、現場での運用もしやすい」 と続ける。 制作グループの倉橋氏と寸田氏もマッチング精度を高く評価する。
また、西本部長は 「オフセットの場合、インラインの検査装置で全数検査をしているが、インプレミアC72の場合、現状では全数検査できる状況にありません。品質保証の要求の低い小ロットものから実績を重ねながら、検査体制を含めた全体のフローを固めていく必要があります。将来的には、パッケージのサンプルの印刷やバリアブル印刷などに活用していきたいです」 と課題を挙げるとともに、活用の本格化に向けて展望を描く。
利用価値を多面的に検討し適切な活用方法の確立を目指す
執行役員・管理本部の髙山本部長は、営業がオンデマンドをどのように扱っていくかが、非常に大きなテーマだと述べる。
「オンデマンドの利用価値を多面的に考える必要があり、営業と製造が連動したプロジェクトを組み検討しています。オフセットの案件を小ロットの場合にオンデマンドに切り替えたり、小ロットの案件をオンデマンドで受けて、それを入り口にオフセットの大ロットの案件につなげていったり、さまざまな可能性を探っていきたいです」
また、髙山本部長は、将来的にはオンデマンド分野が、けん引役として、全社の業績拡大に有効に機能することを目指すという。そのために、顧客と共に、さまざまなジャンルの案件で試し、適切な活用方法の確立を目指す。
「インプレミアIS29の導入も視野に入れています」 と和多田社長。「常に新しいサービスを提供していくことで『和多田に相談すれば何かできる』 と、顧客から思ってもらえるような会社であり続けたい。それが、社員が安心して働ける会社づくりにもなると思う」 と語った。