ポストプレスコラム
Vol.01
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「カブリ」 の2つの類型 "紙の伸び"と"たわみの戻り"
印刷後、刷本を平断裁する工程には、高い寸法精度が求められますが、断裁後に紙束の切り口を確認すると、時折、最も上から数枚が設定寸法よりもわずかに長く仕上がってしまうことがあります。一般的に「カブリ」と呼ばれている現象です。
包丁が真っすぐに下りていないのが原因ではないかとイメージされがちですが、そうではなく、断裁機自体によほどの調整不足がない限り、実際の発生プロセスは主に以下の2つです。
まず、断裁の瞬間の紙の伸びによるものです(図)。包丁が下りて刃先が最初の紙に当たる瞬間、紙が刃の圧力を受け、数枚がわずかに伸びます。そこより下の圧力の影響を受けない紙は設定寸法どおりに断裁されていきます。断裁後、クランプされたままの状態で切り口を確認してみると、上の数枚が長くなっている誤差が見られます。
もう1つ。断裁直後は上から下まで真っすぐに切れているにもかかわらず、クランプを離すと上層の数枚がなぜか長くなっている現象があります。波打った紙や、エアー抜きが不十分な紙束を扱う際に発生しやすくなるようです。断裁前にクランプが下りて紙束に圧力が加わると、波打ちやエアーなどによるたわみの分、上の数枚の紙がわずかにバックゲージ側に逃げるようにずれて押さえられます。その状態で刃が下りて断裁され、クランプが上がって力が解放されると、たわみ分が元の状態に戻ります。この分が誤差となります。
これら2つのカブリ。結果は同じですが原因は異なります。対策に向けてまず、切り口を見極めてみてはいかがでしょうか。
刃が紙に触れる瞬間、わずかに紙が下に押されて伸びた形で切り落とされる。押されて伸びた紙が元に戻るとカブリが発生する。